借入金額,弁済額の各欄に記載のとお り,被告からの借入れとその弁済を繰り返した。
この取引において,被告 は,原告会社に対し 利息制限法所定の制限利率を超過した約定利率で貸 付けを行っており,その超過部分を利息の債務の弁済として受領していた。
2 争点 (1)本件の争点は,以下のとおりである。
ア 被告は「悪意の受益者」(民法704条)か。
(争点1) イ 悪意の受益者が不当利得の返還に付すべき利息の利率は年5%か6% か。
(争点2) ウ 被告が悪意の受益者である場合,原告会社が本訴提起に要した弁護士費用相当額につき,民法704条後段に基づき,損害賠償責任を負うか。
(争点3) (2)争点1(被告の悪意) 【原告の主張】 被告は,貸金業の登録業者であり,利息制限法を超える利率で貸付けで あることを認識しながら,原告会社に対する貸付けを行い,原告会社から 返済を受けていたのであるから,民法704条の悪意の受益者である。
【被告の反論】 争う。
(3)争点2(悪意の受益者の付すべき利息の利率) 【原告の主張1 被告は,貸金業を営む株式会社,すなわち商人であり,原告会社からの 過払により利得した金員をその営業のために利用し,収益をあげている。
このように,受益者が商人で,目的物を営業に使用したと認められる場合 には,端的に商事法定利率である年6分の割合によるべきである。
【被告の反論】 過払金返還請求権は,商行為たる貸付け取引を原因として発生する権利 でなく,民事法である利息制限法を根拠法として発生する民事上の「般債 権である。
しかも,商取引における資金需要の繁忙と投下資本による高収 入の可能性があることから法定利率を年6パーセントに引き上げた立法趣 旨からみて,過払金返還請求権をもって商行為によって生じた債権に準じ るものと解する.こともできない。
よって,仮に被告が悪意の受益者であると認められたとしても,民法7 04条前段に基づき支払うべき利息の利率は年5パーセントと解すべきで ある。
(4)争点3(弁護士費用相当額の賠償義務) 【原告の主張】 過払金返還請求訴訟における弁護士費用相当額については,.民法704 条後段の「損害」に該当するというべきであるところ,原告会社が訴訟前 において過払金の返還を求めたにもかかわらず,被告は,担当者がいない とか本社に聞かないとわからないなどという返答に終始し,相当額の返還 の申し出すらしなかった。
そのため原告会社は弁護士に委任して訴訟を捏 起せざるを得なくなり,弁護士費用の支出を余儀なくされた。
尭護士費用相当額については,過払金の約1割である216万円が相当 である。
建設工事をめぐる請負契約の経緯等
ア平成5年秋ころ,被告Y3は,被告Y1や被告Y2の要望に応じて,本件施設の建設費用の見積りを算出することとなった。
被告Y2は,自らが関わってきた法人企画業の経験から,社会福祉法人の設立やその施設の建設に要する費用は,出資者からの寄附のほか,申請に応じて交付される都道府県や国からの補助金,社会福祉・医療事業団(以下「事業団」という。)からの借入金でまかなうことが通常であるとの認識をもっていた。本件の法人設立には,被告Y1による土地や資金の寄附が予定されていたが,上記のとおり,被告Y1には自己資金がなく,法人設立準備資金等も個人債務を負担して捻出している状態
であるとともに,自ら経営に当たる事業が不信のため個人債務の返済をすることができない状態であった。
被告Y2は,法人に交付される補助金や事業団からの借入金の中から,被告Y1の上記個人債務の返済を行う方法を採ることを提案し,被告Y1及び被告Y3もこれに同調した。
被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,上記方法を実行するために,補助金を最大限交付されるように本件施設の請負代金額を申請し,実際に支出する請負代金額を建設会社との間で減額する方法で差額を生じさせ,この差額をもって,上記被告Y1の個人債務の返済に用いる計画を企てた。
イ被告Y3は,当初,本件施設の建設には敷地面積や予定施設の規模からして約9億円の費用を要すると概算し,その後,積算を重ねた結果,平成7年ころには,被告Y6として工事を受注する場合,請負代金額は8億2000万円くらいが相当と試算した。
平成7年の半ばころには法人の設立の認可が出される見込みが明らかとなり,上記建設費用を基準額として施設建設等を行った場合の補助金支給予定額や事業団からの借入可能額も判明した。
その合計額は約9億円余りであったところ,法人設立後,法人に帰属する契約関係で生ずる債務や登記等の事務手続費用,本件施設の設備の整備などの必要費に加
えて,被告Y1の個人債務をも支払うためには,本件施設の建設費用を相当額減らす必要があったため,被告Y3は,被告Y1や被告Y2からの強い要望を受け,実際に被告Y6に支払うこととなる請負代金の減額を試みた。
被告Y3は,設計を依頼していた設計事務所の担当者Nに施主の予算が足りないなどの説明をして,施設の規模や設備に変更を加えさせるなどし,同年11月ころには,請負代金額を6億8000万円くらいにまで減額することができるとの回答を得,さらに,施設の設備整備費も補助金の申請額より減額することができると試算して,その旨被告Y1及び被告Y2に報告し,了承を得た。
【被告の反論】 この点に関する原告の請求は,実質的に弁護士費用を敗訴者に負担させ ‘るものであり,民事訴訟において弁護士費用の敗訴者負担制度が導入され ていないことなどに照らし,不当である.p 現在,多くの過払金返還請求訴訟が,弁護士に委任せずに捏起されてお り,また,貸金業者側も訴訟提起前の段階から任意に返還に応じるなどし ていることは顕著な事実であって,弁護士に委任して訴訟を提起しなけれ ば過払金の回収が困難であるといったことはもはや過去の話しである。
よって,本件において,弁護士費用相当額の賠償は認められるべきでな い。
第4 当裁判所の判断(第43号事件) 1 争点1(被告の悪意) 貸金業者が借主から利息制限法所定の制限利率を超過した約定利率に基づく利息の支払を受けた場合において,その受領につき,貸金業法43条1項 (いわゆるみなし弁済規定)の適用が認められないときは,貸金業者におい て,同姦項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有 する!こ至ったことがやむを得ない’といえる特段の事情がある場合でない限 り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民 法704条の「悪意の受益者」であると推定されるというべきである・(最高 裁平成19年7月17日第三小法廷判決参照)。
本件において,貸金業者である被告は,上記制限利率を超過する約定利率 に基づく利息の支払を受けているところ,被告は,貸金業法43条1項の適 用があることについて何ら主張,立証していないから,上記特段の事情の存 在を検討する余地はなく,よって,被告は悪意の受益者と推定される。
2 争点2(悪意の受益者の付すべき利息の利率) 過払金についての不当利得返還請求権は,高利を制限して借主を保護する 目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって,営利性 を考慮すべき債権ではないから,過払金を不当利得として返還する場合にお いて,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定め利息の利率は,・民法 所定の年5パーセ二/トと解するのが相当である(最高裁平成19年2月13 日第三小法廷判決参照)。
よって,この点に関する原告会社の主張は理由がない。
3 争点3(弁護士費用相当額の賠償義務) 証拠(甲2,3)及び弁論の全趣旨によると,原告会社は,本件訴訟提起 .前,原告会社の本件訴訟代理人を通じて被告に過払金の返還を求めたにもか かわらず,被告から容易にその返還を受けることができなかったため,本件 訴訟を提起せざるを得なかったことが認められ,よって,被告は,民法70・ 4条後段に基づき,本訴提起により原告会社に生じた弁護士費用相当額を賠 償すべき責任があるというべきであり,その額としては,被告が返還すべき過払金の額,そのほか本件に現れた諸事情を考慮し,216万円が相当であ ・る。
次に,上記損害に対する遅延損害金の起算日についてみるに,民法704 条後段の賠償責任は,不当利得制度において当事者の公平を図るために認め られた責任であるから,不当利得返還義務と同様に,期限の定めのない債務 として請求の翌日から遅滞に陥る.と解するのが相当である。
よって,被告は, 上記損害額に対する,第43号事件の「訴えの追加的変更書」送達の翌日で ある平成19年5月18日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割 合による遅延損害金の支払義務を負うというべきである。
4 仮執行免脱宣言について ・被告は,そめ敗訴の場合には仮執行免脱宣言をすることを求めているとこ ろ,被告も2158万8542円ゐ限度では返還すべき過払金の存在を認め ており,原告会社の権利の確実性や執行の遅延による原告会社の損害等を考 慮すると,本件は仮執行免脱宣言をすべき事案とは認められない。
第5 結論 したがって,原告会社の請求は,不当利得に基づく過払金合計2160万 0501円,各過払金に対する年5パーセントの割合による確定利息262 万3742円及び上記過払金合計に対する平成18年12月5日から支払済 みまで年5パーセントの割合による金員の支払並びに不法行為に基づく損害 賠償金2,16万円及びこれに対する平成19年5月18日から支払済みまで 年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり, また,原告の請求は理由があるから,主文のとおり判決する。
1 本件趣訴を棄却する。
.2 附帯控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1)控訴人は,附療痙訴人に対し,151万2241円及びうち 140万4127円に対する平成18年6月8日から支払済み まで年5分の割合による金員を支払え。
(2)附轟癖訴人のその余の請求を棄却する。
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